交配・実生



●有星類

北半球から南半球まで広範囲に自生するサボテンたち。
当然、海抜数メートルから数千メートルの高山植物的な物まで、さまざまです。
これらの気象条件やいろいろの生態の違いが実生を行う上での条件的な差が生じるわけです。


有星類は自家受精しないので、採種するには2本以上の親木が必要です。春は桜の咲く頃から暖地では10月頃まで断続的に開花します。花はほとんどいっせいに開花するので、採種は容易です。
写真の花はランポー玉です。中心の柱頭(雌しべ)を見てください。次の写真と比較していただければよく分かりますが、まだ柱頭が開いていないので、この状態で交配しても結実しません。下の写真のような状態になってからピンセットなどで柱頭の周りの花粉(おしべ)を採り柱頭につけます。
受粉すれば2、3週間くらいで(高温期は早い)熟します。黄花底紅系の兜、白ラン、瑞鳳などは下部が軟化し崩れるようになります。ランポー、般若などの黄花系は上部が星型に割れます。
採果したら、さらしのような目の細かい布などに種を取り出し、軽く揉むようにして果肉を除きます。できれば軽く水洗いをするのが一番です。有星類の種はやわらかいのでやさしく扱ってあげてください。種はティッシュの上に広げ水分をとります。
ランポー、般若類はすぐに蒔いてもよくはえますが、底紅系は1ヶ月くらいたってから蒔いたほうが成績がいいです。有星類の種子の寿命はひと夏ひと冬くらいです。貯蔵する場合、封筒などに入れ、冷蔵庫等で保管すればよいでしょう。
鉢に用土(私は上部1cm位までは実生苗を植える用土をいれ、上部には赤玉小粒を使用)を入れます。このとき用土から鉢の上まで2cm程度は空けないと発芽時に苗が蒸れたり高温になりすぎたりします。次に上からたっぷりと潅水します。
これくらいの鉢(写真は3寸の角鉢)で50〜100粒位蒔けます。種を蒔いたらラベルや仕切りをして霧吹き等で種子を湿らせ(種子に充分な水分がないと発芽しません)、鉢の上からガラスなどで蓋をします。
発芽には光は直接必要ありませんが発芽後はやわらかい光線が必要ですので、真夏以外は室内等暗い所で蒔くのはお薦めできません。要は温度、光、水なのです。実生後2、3日〜1ヶ月くらいで発芽します。
実生1週間目のランポー。
これくらいになれば、ガラスと鉢の間に少し隙間を開け外気に慣らします。光線が強いと赤茶けた色になり、弱いともやしのように細長くなり、軟弱になります。有星類の場合、長卵形になるように作れたらベストです。成長するにしたがって通風を図り光線も徐々に強くしていきます。
ダイセン、ベンレート等をときどき霧吹きで消毒してやれば病気の発生は少なくなります(私はあまりしませんけど)。ナメクジ、ゴキブリ、コオロギ等この時期の赤ちゃん苗にとって大敵ですので注意が必要です。
発芽後すぐに植え替える方から1年近くおく方までいますがサボテンは小苗のうちはまめに植え替える方が早く大きくなりますがあまり小さいと扱いにくいので(人間の赤ちゃんでも首がすわっていない時は怖い)私は半年〜1年くらいたってから植え替えます。
1回目の植え替え(兜)。1cmたらずの苗ですが、これくらいになると割りと扱いやすい。植え替え1週間ほど前から乾かして、抜き上げて3日ほど陰干ししたものを植えたものです。植え替え直後は日焼けしやすいので穏やかな環境を作ってあげます(たとえばティッシュをかける)。まだこの時期では強光線や風を通しすぎるとあまり生育がよくない。
2回目の植え替え。実生2年苗。これくらいになると兜も顔が見えるようになります。管理も徐々に一般の管理に近づけていきます。まだこれくらいのサイズでは赤くなるほど強い光線で栽培してはいけません。
栽培上からは兜は他の種より地温が高いのを好みます。瑞鳳系はあまり根が丈夫ではないので、植え替え時にあまり根を切らないよう。兜、ランポー、般若は高温期であればスパッと切ってしまったほうが生育がいいでしょう。